逃げ場としての喫茶店

「なぜ喫茶店をはじめたのですか?」と聞いてもらえることがありがたいことに増えました。

なぜ始めたんだろう。きっと、どんな物事でもはじめたきっかけはあるのだろうけれど、きっかけは一つとは限らない。

冷静にできごとを振り返ると、

当時、わたしはまだ大学5回生の四年生で、卒論もほぼ書き終わり暇を持て余していたこと。そして就活をせずに卒業したら農家さんたちのお手伝いをしながら日本を巡ろうかしらなんてぼんやりと考えていただけだったこと。

そこに、お店作りの手伝いをしませんかという投稿が目に止まって、本当にたまたま行ってみたこと。

そこからとんとん拍子に出店させてもらえることになって、喫茶店にしようと思ったこと。アルバイト先のマスターがネルなどを貸してくれたからネルドリップを淹れることができるようになり、自粛期間中にパートナーがよく作ってくれた自家製あんこがたまらなくおいしくて、それで自家製あんこのホットバターサンドにしようと思ったこと。2月から始めようと思ったから2月3日にオープンして、そこからは毎週のリズムができて、ありがたいことにいつもきてくださる方がいらして、やるたびにやって良かったと思えて、がっしりと支えられて、今に至る。

なぜ、始めたんだろうね。

巡り合わせとしか思えない積み重なりの先にいまの自分がいるだけで、いつまで続くのか、いつ終わるのか、わからないけれど、続けられるだけ続いていけたらきっとすてきだろうなあ、というのが正直な温度感なんです。変だよね。

だからなぜを問われたときに言葉に詰まってしまう。
なぜ、って、ときに難しい。

だけどこの頃ひとつだけぼんやりわかることがある。これもまた振り返っての思いだけれど、きっと私は「逃げ場を作りたかった」。自分のために、自分に似た誰かのために。

週に一度だけでもたった一時間でも
誰のためでもなく「自分のため」に
誰でもない「誰かさん」でいていい

そんなエスケープって、必要じゃないですか。

背負わされたり自ら背負い込んだらしている、いろんな役割、いろんな制約、いろんな思い込みから、いったん離脱できるような場所。それが私には喫茶店というかたちでやるのが合っているってだけのような気がする。

実際、いろんな弾を避ける場所として機能している気もするこの頃。

また個人的に、自分の信頼のおける逃げ場はあればあるほどいいと思っています。カフェでもバーでもばあちゃんちでも銭湯でも図書館でも押入れでもいいんです。逃げ場が多いほど、きっと生きやすい。ちがうかなあー。

だから、わたしはこれからも逃げ場をつくりたい、守りたい、続けたい。喫茶店のかたち以外でも全然いいと思う。雑誌をつくるかもしれないし、ラジオをやるかもしれないし、キャンプにみんなで行くのかもしれないね。

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ABOUT US
鈴木 なりさ喫茶おおねこ店主
1997年 9月生まれ ちいさな農家育ち
2016年 青山学院高等部卒業
2021年 2月 武蔵野市で地域密着喫茶店「喫茶おおねこ」開業。以降ひとり店主として地域活動をスタート
2021年 3月 ICU(国際基督教大学)卒業
2023年 武蔵野市で地域密着喫茶店「喫茶おおねこ」のひとり店主をしながら、初めての選挙応援を経験(さこうもみ武蔵野市議会議員)
11月 政治活動を開始
12月 武蔵野市議会議員補欠選挙へ立候補